「止まれないから」と信号無視をしない

ある事業所で、社員が信号無視して交差点を直進しているときに、横断歩道を渡ってきた小学生の自転車と接触する事故がありました。管理者が運転者に事故の状況を聞いています。


管理者「幸い、子どもの自転車が壊れたくらいですんだのでよかったが、どうして信号無視なんかしたの?」


運転者 「信号を無視するつもりはなかったんです」

 

管理者「信号無視する意志がない者が、どうして赤信号で交差点に進入していくの?」

 

運転者 「交差点の手前で黄信号に変わったので、止まれなかったんです」

 

管理者「誰でもよくする言い訳だが、それで赤信号になって横断してきた自転車と接触したというわけだな」

 

運転者 「そうです」

 

管理者「それは、ちょっと違うんじゃないの?」

 

運転者 「どうしてですか?」

 

管理者「仮に、君が交差点に進入するときに黄信号から赤信号になったとしても、交差道路の信号が赤から青に変わるまでには少し時間がかかるんだよ」

 

運転者 「はあ?」

 

管理者「交差点の信号は全方向が赤になっている時間が3秒くらいあるので、交差道路にいる子どもの自転車も出てきていないはずなんだ」

 

運転者 「でも、出て来ましたから!」

 

管理者「そこが問題なんだよ。子どもがすでに横断歩道を渡り始めていたということは、交差点手前ですでに赤になっていたんじゃないの?」

 

運転者 「えっ……」

 

管理者「そうなんだな」

 

運転者 「そう言われれば、そうだったかも……」

 

管理者「君は交差点の手前で青信号から黄色に変わったときに、交差点に進入する習慣があるみたいだけど」

 

運転者 「いつもではありませんよ。ブレーキをかけても停止線で止まれないときもありますよ」

 

管理者「確かにそういうときもあるが、ここで問題にしているは、十分に止まれるのに止まれないと自分勝手な判断をしているのではないかということだよ」

 

運転者 「どういうことですか…」

 

管理者「それが習慣になってくると、いつかは黄信号から赤信号に変わっても、交差点に進入することに抵抗がなくなり、完全な信号無視をするようになるということだよ」

 

運転者 「今振り返ると、そういう運転をしていたかもしれませんね」

 

管理者「そういう君の悪い運転習慣が、今回の事故につながったと思うよ」

 

運転者 「すみませんでした」

 

管理者「それから、交差点手前では黄信号に変わりそうかどうかを予測することも大事だよ。気にしていれば変わりそうなときが分かるからスピードを落とすことだ」

 

運転者 「はい」

 

管理者「そうすれば、交差点手前で黄信号になっても余裕を持って止まることができるし、『止まれないから』と強引に進入することもなくなるよ」

 

運転者 「はい、わかりました」

 信号が青から黄色に変わったときに、「止まれないから」と強引に交差点に進入していると、いつかは信号無視をして事故を起こすことになります。黄信号は「止まれ」を実行してくださいね。



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