ある事業所で得意先を訪問していた社員が、道路に飛び出して来た子どもと接触する事故を起こしました。帰社した社員が管理者に事故報告をしています。
運転者「すいません。子どもと接触事故を起こしてしまいました」
管理者「ケガも大したことがなくて、不幸中の幸いだったけど、場所は何処なの」
運転者「○○町の交差点を過ぎて少し行ったところで、左側に公園があるところです」
管理者「その公園から飛び出してきたんだな。確かに、あそこは道路側に植込みがあって死角になっているな」
運転者「そうなんです。子どもが見えたので、慌ててブレーキを踏んだんですが、間に合わなかったんです」
管理者「ところで、子どもが道路に飛び出したときに、一人で飛び出してきたの?」
運転者「うーん。一人でしたけど、その前にボールが道路に転がってきたんです」
管理者「えっ、最初にボールが転がってきたのか?」
運転者「そうです。それから少し遅れて子どもが道路に飛び出して来たんです」
管理者「そういうことだったんだな。ところで、ボールが転がって来たとき、君は少しはスピードを落としたのか」
運転者「あまり落としてないですね。アクセルを踏み込んでいる力を少し緩めた程度ですね」
管理者「では、ボールが転がって来たとき、子どもが飛び出してくるかもしれないと思わなかったのだな」
運転者「一瞬、ボールのほうに意識が向いてしまって、子どもに気づくのが遅れて、そのぶんブレーキも遅れてしまいました」
管理者「その一瞬の差が、子どもを避けれれるのか、当たってしまうのかの差になったのだと思うよ」
運転者「そうですね。ボールが転がってきたときに、アクセルから足を離していれば、もう少し早くブレーキを踏めたのでないかと思います」
管理者「ボールが路上に飛び出してきたときに、運転者としてまずするべきことは、ブレーキを踏む準備なんだ」
運転者「そうなんですね」
管理者「こうした行為は『ブレーキの準備性』と呼ばれているんだ」
運転者「ブレーキの準備性、ですか」
管理者「そう、具体的にはボールが飛び出してきた所まで少し距離があれば、アクセルから足を離してブレーキペダルの上に乗せて近づくようにする」
運転者「はい」
管理者「あまり距離がなければ、すぐにブレーキを踏んでスピードを落とすようにしなければならない」
運転者「私も、すぐにブレーキを踏む準備をしてりたら、衝突は避けられたかもしれませんね」
管理者「そういうことだな。これからは、道路にボールが転がってきたら、子どもの飛出しを予測して、すぐにブレーキを踏む準備をしてくれよ」
運転者「はい、わかりました」
道路にボールが転がってきたとき、漫然と運転していれば子どもが出てきたときに対応できません。ブレーキの準備をしていれば、すぐにブレーキを踏むことができ、衝突を避けることができますよ。