ある事業所の社員が、マイカーで帰宅途中に、歩行者と接触事故を起こしました。翌日、出社した社員が上司に事故の報告をしています。
運転者「すみません、昨日帰宅途中に歩行者と接触する事故を起こしてしまいました」
管理者「どこで、歩行者と接触したの?」
運転者「○○町の交差点の先です」
管理者「確かあの辺りは、片側1車線の見通しのよい直線道路だろう。そこで歩行者と接触するなんて、あまり考えられないことだよな」
運転者「そうですけど、実は反対車線で事故が起きていまして…」
管理者「その事故が起きていたことと、君が事故を起こしたことと何か関係があるの?」
運転者「ええ、事故を起こしたドライバーが急に反対車線から自分の車線に出てきたものですから、避けられませんでした」
管理者「でも、事故現場付近を通過しようとしていたのだから、スピードも落としていたんだろ?」
運転者「もちろんです。スピードを落としていたからこそ、歩行者が転倒するぐらいで済んだんですよ」
管理者「何か、自慢げに言っているように聞こえるけど、君は事故を起こした当事者だからね」
運転者「すみません」
管理者「では、スピードを落としていたのに、なぜ歩行者を避けられなかったの」
運転者「あの辺りは、街灯もなく暗かったので、歩行者が出てくるがわからなかったです」
管理者「確かに君が帰った時刻は暗かったと思うけど、それでもスピードを落としているわけだし、避けられたと思うけどね」
運転者「うーん…」
管理者「では聞くけど、君は事故現場付近を通過するとき、どこを見ていた?」
運転者「……」
管理者「事故現場を見てたんじゃないのか」
運転者「すみません。事故を起こした車が近所の人の車に似ていたものですから、つい知り合いが事故を起こしたんじゃないかと思って」
管理者「それで、事故車両に意識が集中して、わき見をしていたということなんだな」
運転者「事故車両が気になって、その先に歩行者がいるのに気づきませんでした。でも、あんなに近くから飛び出してくるかな…」
管理者「君にしたら、なぜ至近距離から飛び出してくるのか、と思っているかもしれないが、事故を起こしたドライバーは誰でも気が動転して突飛な行動をとるものなんだよ」
運転者「そうですね。自分も事故を起こしたとき、少しパニックになっていました」
管理者「これからは、事故現場の付近を走行するときには、事故を起こした人は誰でも気が動転して、正常な判断ができにくい状態にあるということを頭に入れ、事故現場の方にわき見をしないように運転に集中してくれよ」
運転者「はい、わかりました」
事故現場を目撃すると、誰でも見たい気持ちはあります。でも、そうした自分の欲求のまま運転していると、いつかは事故を起こすことになります。運転中は、見たい気持ちを我慢してくださいね。