ある事業所で、得意先回りをしている社員が小学1年の子どもと接触事故を起こした容疑で警察から事情聴取を受けました。管理者が帰ってきた社員から事情を聞いています。
管理者「子どもと事故を起したなんて、聞いてないぞ。本当に事故を起こしたのか?」
運転者「すみません。○○会社の駐車場を出るときに、左から来た子どもと接触事故を起こしたことは確かなんですが……」
管理者「だったら、なぜ報告しなかったんだ?」
運転者「そうなんですが……」
管理者「何かあったのか?」
運転者「ええ、子どもが『大丈夫です』と言ったものですから、ついそのまま別れてしまって」
管理者「それで、事故とは認識しなかったということか」
運転者「そうなんです。ところが、その夜に子どもの足にアザが出来ているのを親が見つけて、どうしたんだということになったみたいです」
管理者「それで、子どもが昼間事故にあったことを告白して、親が警察に通報しというわけだな」
運転者「そうですね」
管理者「今までの話を聞いていると、やはり君のほうに否があるよな」
運転者「うーん……」
管理者「仮にも、子どもと接触している訳だから、いくら相手が『大丈夫です』と言っても、額面どおりに受け取ることはできないと思うよ」
運転者「私も車を降りて確認したんですけど、ケガをしている様子もなかったし、つい大丈夫かなと……」
管理者「子どものほうも、多少は自分のほうが悪いという気持ちがあったりすると、『大丈夫です』と言ったりするからな」
運転者「そうなんですね」
管理者「相手が大丈夫と言って、家に帰った後に容体が急変して病院に搬送されるという事例はいくらでもあるんだ」
運転者「そんな事例もあるんですか……」
管理者「もし、そのようなことになれば「ひき逃げ」に該当することになりかねないよ」
運転者「ひき逃げですか……」
管理者「ひき逃げになれば、違反点数だけでも35点だから、即刻「免許取消し」になってしまうよ」
運転者「それじゃ、仕事が出来なくなってしまいますよね。ちょっと接触しただけで、免許取消しはキツイですね」
管理者「だから、事故を起こしたら相手が『大丈夫』といっても、警察への届け出は必要なんだよ」
運転者「そういうことですね」
管理者「警察に届けておけば、「ひき逃げ」にはならないからな」
運転者「正直言って、ひき逃げのことはまったく考えていなかったです」
管理者「そうだろう。これからは、万が一歩行者や自転車と接触したときには、相手が『大丈夫』といっても絶対に立ち去らないで警察に連絡してくれよ」
運転者「はい、わかりました」
歩行者や自転車と接触すると、その場では何もないように見えても、その後で容体が急変することがあります。相手がケガをしてなさそうに見えても、絶対に立ち去らないようにしてくださいね。