ある事業所の社員が、自販機で飲み物を買おうとして車を降りたところ、車が動き出して前の車に接触する事故を起こしました。管理者が帰社した社員に事故の状況を聞いています。

管理者「止めていた車が動き出したって、どういうこと?」

運転者「すみません。自販機で飲み物を買おうとして車を降りたところ、車が動き出して前の車に当たってしまいました」

管理者「車を止めた道路は、坂道だったのか?」

運転者「急な坂道というほどではないんですが、少し下り坂になっていました」

管理者「少し下っていたんだな。ところで、車から降りるときに、君はギアをどこに入れていた?」

運転者「ギアですか?Ⅾレンジのままでした」

管理者「Ⅾのままで降りたのか。ところで、サイドブレーキは掛けて降りたんだろうな」

運転者「それが、掛けるのを忘れてしまって……」

管理者「サイドブレーキを忘れたって、それじゃ車が動き出しても仕方がないだろう」

運転者「すいません。喉がカラカラに渇いていたもので、とにかく飲み物が欲しくて慌てて降りてしまいました」

管理者「いくら急いでいても、サイドブレーキを掛けるくらいの時間はあるだろう」

運転者「そうなんですが、飲み物を買うことに意識が向いていて、サイドブレーキのことを忘れてしまいました」

管理者「よく忘れた言い訳として、そういう理由を言う人がいるけど、実は本当の理由は違うところにあると思っているんだ」

運転者「どういうことですか……」

管理者「慌てていたり急いでいたりするときに、確かにミスが出やすい。しかし、そのミスは日頃の習慣が出たのに過ぎないと思っている」

運転者「日頃の習慣ですか?」

管理者「そう、君は車を降りるときに、どのような停止措置をして降りている?」

運転者「もちろん、エンジンを切ってギアはPレンジに入れて、サイドブレーキを掛けて降りていますよ」

管理者「正直に言ってもらいたいんだが、いつもエンジンを切っている?」

運転者「うーん、ポストに葉書を投函するだけのような短い停車なら切らないことがありますね」

管理者「そのとき、サイドブレーキは?」

運転者「もちろん、サイドブレーキは掛けていますよ」

管理者「でも、サイドブレーキが甘かったら車が動き出していたかもしれないよな」

運転者「そうですね」

管理者「君は最初にきちんと停止措置はしていると言っていたが、ときどきエンジンを切らずに降りているみたいだな」

運転者「すみません」

管理者「急いでいたりすると、日頃の悪い習慣が出てミスが起こりやすい。だから日頃からきちんとした習慣を身につけておく必要があるんだ」

運転者「そうですね」

管理者「これからは日頃から手抜きをせずにきちんと停止措置をするようにしてくれよ」

運転者「はい、わかりました」

停車措置が不十分で起きた事故をみると、慌ててミスをしたというよりも、身についた悪い習慣が事故に結びつくことがあります。日頃からきっちりとした停車措置を身につけてくださいね。