ある事業所で、60歳になった運転者が薄暮の時間帯に事故を起こし、管理者が事故の状況を聞いています。

管理者「わき道から出てきた自転車と接触したんですか?」

運転者「すみません。急に出てきたんでブレーキを掛けたんですけど、間に合いませんでした」

管理者「事故が起きたのが4時半頃ということですけど、周囲は暗かったのですか?」

運転者「少し暗ったですね」

管理者「自転車を発見するのが少し遅れたということはないですか?」

運転者「いえ、そういうことはないですね」

管理者「スピードはどれくらいで走行していましたか?」

運転者「50キロ位かな?」

管理者「結構、速いスピードですね。あそこの道路は夕方の時間帯は自転車が多くなるでしょう?」

運転者「そうですね」

管理者「では、ブレーキを踏むまでの反応時間が遅れたということはないですか?」

運転者「遅れてはないと思いますよ。さっきから聞いていると私の運転能力を疑っているのですか?」

管理者「そうではないんです。人間は誰でも年を重ねてくるといろいろな能力が落ちてきますので、若い頃みたいな運転はできないということを言っているんです!」

運転者「まだまだ、若い者には負けてはいませんよ」

管理者「能力の衰えを認めたくない気持ちはわかりますが、誰でも反応時間が遅くなったり、認知力が衰えてくるのでは当たり前なんです」

運転者「う~ん」

管理者「私もそうですけど、夕方暗くなると物が見づらくなるとか、少しは心当たりがあるんじゃないですか?」

運転者「それは、この年になると少しはありますよ」

管理者「そうでしょう。事故を起こさないためには、運転の衰えをカバーする運転方法を考えてもらいたいんですね」

運転者「どういうことですか?」

管理者「たとえば、反応時間が遅くなったと感じたら、スピードを落とすとか、なるべく車間距離を開けて走るとか」

運転者「はあ…」

管理者「視力の衰えを感じたときには、周囲が見えにくくなる夕方や夜間に運転することを避けるといったことです」

運転者「プライベートの運転では、それも可能だと思いますが、仕事のときはそういうことはいかないですよ」

管理者「そのときは、街灯が多い明るい道路を選択するといったことになると思います」

運転者「そうですね」

管理者「誰でも年齢を重ねると心身機能が衰えてきます。それを補う運転方法を常に考えて事故を起こさないようにしてください」

運転者「はい、わかりました」

年齢を重ねると自分の運転能力の衰えをカバーするかを考えておかなければなりません。これまでの運転方法やルート選択などを一度見直してみて、何がいちばん安全な方法を考えてくださいね。