ドクロの帽子を買いたい

 冬本番が近づいてきましたね。寒がりのわたしは、外へ出るときには、しっかり厚着をしています。

 先日、量販店の衣料品売り場でのことです。寒かったので、防寒になるものでも買おうかと思い、手袋を見ていました。

 すぐそばに高齢のご夫婦がいて、帽子を選んでいます。どうやら奥さんは、大きなドクロの絵が入った、若者向けの帽子が気になる様子です。

 

 その帽子をしばらくジッと見ていましたが、手に取ってご主人に、「どうこれ?」と尋ねました。真面目そうなご主人は、「ドクロ。う~ん、どうかな」と少し否定的です。

 奥さんは残念そうです。欲しそうでしたが諦めたようで、「そうだね。もうすぐドクロになるのに、ドクロの帽子はいらないね」と、ブラックギャグを言い放ちました。

 “エッ!すごいことをいうな”びっくりと、面白さでわたしの頬が緩んだのを見て、「ドクロに、ドクロはいらないね」と横目でわたしの顔を見ながら、もう一度繰り返してたたみかけ笑いを誘います。

 思わずわたしは、「ぷっ」と笑ってしまいました。それを見て奥さんは、満足そうにご主人とその場を立ち去って行きました。

 寒さを防ぎたいという生理的な欲求が、購入したいというものに変化し、それが他の人と関わりあいたいとなり、認められたことで満足をした。といった具合でしょうか。


 人間の心理というのはつくづく不思議で、面白いものですね。

(野村幸一)

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