缶詰の重さ

 野村です。
 今回は、『分かる』ということについて書きます。

 帰宅すると、あまり弱音を吐かない母が「今日は疲れた」と言いました。
 車イスの父を治療のため病院に連れて行ったためです。そして「缶詰が重かった」と言ったのです。

 缶詰って何のこと? 缶詰が重いってどういうこと?

 よく聞いてみると、治療をしたドクターが、栄養摂取のための缶詰を出されたそうです。母は、車イスを押しながら缶詰を持つこととなり、とても重かったのだということがわかりました。

 母の話が終わって、ふと見ると食器棚の上に、40cm×30㎝の段ボールの箱がありました。
 数個の缶詰だと思っていたら、缶詰の箱詰めだったのです。『ははあ、これがさっきの話の缶詰か。車イスを押しながらこれを持つのは重いだろうな・・・』と思いました。

 翌朝、何気なく持ってみようかなと思い、缶詰の箱を持ち上げました。
「わっ!重い!!」(念のため、測ってみると7キロありました。)
 持ち上げてみて、本当の重さを『分かって』いなかったことに気づきました。
(聞く→見る→触れる、の違いでしょうか。)

 ただ母が分かってほしかったことは、缶詰の重さだけでなく、それを運んだ大変さだったと思います。もちろん、このことも『分かって』いませんでした。

 きっと、『分かった』つもりになっているだけで、本当は『分かっていない』ことが多いのでしょうね。
『分かっていない』と認識することが、『分かる』ための第一歩だと思います。

(野村幸一)

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