被害者が「大丈夫」と言っても立ち去らない

 ある事業所に、得意先回りをしていた社員が、子どもの自転車と接触事故を起こして転倒させたにもかかわらず、そのまま立ち去ったと抗議してきました。管理者が現場付近を走行していた社員に、どのような状況であったか話を聞いています。


 

管理者「さっき、子どもが車と接触したのに、そのまま立ち去ったと抗議の電話があったんだけど、昨日その付近を走行していたのは、確か君だよな?」

 

運転者「ええ、子どもの自転車が路地から急に飛び出してきたので、とっさにブレーキを踏んだのですが、避けきれずに接触してしまいました」

 

管理者「警察にも届けずに、そのまま立ち去ったのか?」

 

運転者「私はすぐに車から降りて『大丈夫?』と声をかけたんですよ。そしたら子どもが『大丈夫です』と言ったので、届けなくてもいいかなと……」

 

管理者「いくら『大丈夫』と言っても、警察に届けないといけないよ。後でいろいろと面倒なことが起こることもあるからな」

 

運転者「面倒なことですか?」

 

管理者「そう、最悪の場合『救護義務違反』に問われることもあるんだ」

 

運転者「救護義務違反ですか? でも、出血もなかったですし……」

 

管理者「たとえそうであっても、事故にあった子どもは、気が動転しているので『大丈夫です』と答えたりするんだが、実はケガをしていることもある」

 

運転者「うーん……」

 

管理者「それから、事故が起きたときには無事なように見えても、自宅に帰ってから容体が急変して具合が悪くなったりすることも少なくないよ」

 

運転者「そういうこともあるんですね」

 

管理者「そうなると、『救護義務違反』に問われることになり、違反点数が35点加算されて『免許取消し』になったりする事例も結構あるんだよ」

 

運転者「免許取消しですか、それは厳しいですね……」

 

管理者「今回の場合、子どもさんはケガはしていないようなので、そんなことにはならないと思うが、後で容体が急変することもあるということを頭に入れておかないとな」

 

運転者「そうですね」

 

管理者「それから、君は先ほど警察に届けなかった理由を、子どもが『大丈夫』と答えたからと言ったけど、理由はそれだけか?」

 

運転者「どういう意味ですか?それだけですよ」

 

管理者「警察を呼ぶと事故処理に時間がかかるし、面倒だなという気持ちがあったんじゃないのか」

 

運転者「うーん……」

 

管理者「そういう気持ちがあると、相手から『大丈夫です』と言われると、ついそれに甘えて警察への届出を怠ったりする」

 

運転者「申し訳ありません。少しはそんな気持ちがあったかもしれません」

 

管理者「ちょっと時間を惜しんだばかりに、後で大きな代償を払うことになることを肝に銘じておいて欲しいんだよ」

 

運転者「そうですね」

 

管理者「これからは、事故を起こして相手が『大丈夫』と言っても、必ず警察に連絡するとともに、病院などで検査を受けてもらうようにしてくれよ」

 

運転者「はい、わかりました」


 どんな小さな事故でも警察に届けていないと、後で被害者から警察に通報があった場合、問題が発生するリスクがあります。相手が「大丈夫」といっても立ち去らないようにしてくださいね。