ある事業所に、「お宅の社員が走行中にイヤホンをしながら運転していたが、運転に集中できなくて危ないじゃないか」と抗議の電話がありました。管理者が抗議のあった場所を走行していた社員に、事実関係を聞いています。

管理者「イヤホンをしながら運転していたのを見た、と抗議の電話があったが、本当にイヤホンをして運転していたのか?」

運転者「ええ、イヤホンをしていました」

管理者「そうか。イヤホンで何を聴いているんだ?」

運転者「私の好きなJ-POPの音楽です」

管理者「いつも音楽を聴いているのか?」

運転者「そうですね。少し疲れたと感じたときに好きな音楽を聞くとリラックスするんで、午後に聴くことが多いですかね」

管理者「好きな音楽を聞くと、脳が活性化され疲労を軽減するなどの効果があるという研究もあり、それなりに効果があると思うけどね」

運転者「それでは、なぜ運転中に聴いてはいけないんですかね?」

管理者「運転中に、音楽を聴いてはいけないというルールはないけど、問題はイヤホンで耳を塞ぐことなんだ」

運転者「イヤホンですか?」

管理者「イヤホンで耳を塞ぐと、周りの音が聞こえない、音楽に没頭すると運転に集中できない、といった安全運転上の支障が出るよな」

運転者「うーん……」

管理者「こういう状況で、事故を起こしたりすると、安全運転義務違反などに問われる可能性がある」

運転者「そうなんですね」

管理者「それと、事故を起こさなくても、明確にイヤホンをして運転してはいけないと定めている都道府県もあるので、注意が必要だ」

運転者「都道府県によって違うんですか?」

管理者「都道府県の条例で、大音量やイヤホン・ヘッドホンをして音楽を聴きながら運転することを禁止しているところも多くあるんだ」

運転者「そういう地域では、違反になるわけですね」

管理者「それから、イヤホンをして外からの音を遮断して運転すると、どんな問題があると思う?」

運転者「うーん、救急車のサイレンが聞こえないこと、とか」

管理者「イヤホンで音楽を聴いていたとき、経験があるのか?」

運転者「そうなんです。救急車が気がつかないうちに近くまできていてビックリしたことがあります」

管理者「その他にも、他車の警告クラクションが聞こえずに事故のリスクが高くなったりすることもある」

運転者「そうですね」

管理者「音の情報は、軽視しがちだが、音の情報がないと安全運転ができないこともあるんだよ」

運転者「そこまで重要視していませんでした」

管理者「運転するとき、好きな音楽を適度な音量で聴くのはいいが、これからはイヤホン等で耳を塞いだりして聴くのは慎んでくれよ」

運転者「はい、わかりました」

運転中に音楽を聴くのはよいのですが、大音量で聴いたり、イヤホンやヘッドホンで耳を塞がないようにしましょう。周りの重要な音が聞こえなくなり、安全運転ができなくなりますよ。