心のバリアフリーを意識しよう

 ある事業所に、「車椅子使用者用駐車スペース」に会社のロゴが入った社有車が止まっていた、と苦情の電話がありました。当日苦情のあったルートを走行していた運転者に、管理者が事情を聞いています。

 

管理者「昨日、「車椅子使用者用駐車スペース」に当社の車が止まっていたという苦情の電話が掛かってきたんだ。確かあの辺りを走行していたのは君だったよな?」

 

 

運転者「ええ、そうですけど」

 

 

管理者「じゃあ、君が「車椅子使用者用駐車スペース」に車を止めていたのか」

 

 

運転者「そうですね」

 

 

管理者「もちろん、車椅子使用者用だということは知っているよな?」

 

 

運転者「知っていますよ」

 

 

管理者「じゃあ、なぜそんな所に止めたの?」

 

 運転者「駐車スペースが混んでいまして、結構探したんですが見つからなくて、それでつい……」

 

 

管理者「「車椅子使用者用駐車スペース」に車を止めたのか?」

 

 

運転者「空いていましたし、トイレに行って缶コーヒーを買うぐらいなんで……」

 

 

管理者「ちょっとだけだからと、安易な考え方をしたわけか」

 

 

運転者「そうなんです」

 

管理者「君は、なぜ「車椅子使用者用駐車スペース」が設けられているか、考えたことがある?」

 

 運転者「もちろんですよ。車椅子を利用している人が車の乗り降りするときに幅広い駐車スペースが必要だからでしょ」

 

管理者「それともう一つのポイントは、障害のある人があまり移動しないで済むように出入口付近やトイレに近い場所に設置されている」

 

 運転者「そうですね。そういう近さもあって、ちょっとだけならよいかという誘惑に負けてしまいました」

 

管理者「君が今言ったように、「空いているから」とか「トイレに近いから」と安易な気持ちで止めている人もいるので、問題になっているんだ」

 

 

運転者「うーん、恥ずかしいです」

 

管理者「そういう人は、自分の意識の中に「心のバリアフリー」が根づいていないからなんだ」

 

 

運転者「「心のバリアフリー」って何ですか?」

 

管理者「簡単に言うと、バリア(障害)を感じている人の身になって考え、行動を起こすことなんだ」

 

 運転者「つまり、私が車椅子を利用している人の身になって、どうすれば車椅子の人が快適に過ごせるかを考えるということですね」

 

管理者「そう、その人の身になって考えると、車椅子利用者のスペースに健常者の車が止まっていると悲しくなるよな」

 

 

運転者「本当に反省しています」

 

管理者「これからは、「心のバリアフリー」を意識して、安易に車椅子利用者のスペースに車を止めないようにしてくれよ」

 

 

運転者「はい、わかりました」

 車を運転するすべての人が、高齢者や障害者等の移動の困難を自らの問題として意識し、その人たちが快適に移動できるように積極的に協力する「心のバリアフリー」を推進してくださいね。