研修の受講者 その2

 こんにちは、高林です。前回の続きです。いつもの研修なら、運転適性テストをしたり、運転をチェックしたりします。でも、このときは、研修の進め方を少し変えました。

 受講者の方の雰囲気から、この方がなぜこんな態度なのかが気になったので、最初に、この方が起こした事故について伺いました。

 事故は、多車線道路を走行している際のトラックとの接触でした。受講者の方が、3車線道路の最も左側を走行されていたときに、真ん中の車線を走行してきたトラックが、自車が走行している車線へ急に寄ってきて、右のドアミラーと車体を少し擦ったというものでした。速度は、60km/h程度でしたが、幸いにも大きな事故に至りませんでした。

 そして、受講者の方は、私に向かって「この事故は、私が悪いのではない、相手が寄ってきたことが原因だ」と言いました。また「事故防止は大切だが、相手に非があるのに、なんで自分が、いろいろと言われるのか?」と強く言われました。

 確かに、今回の事故はトラックが接近したもので、被害事故といえます。ですから、このように考えることは、当然のことです。私は、できるだけ話を注意深く聞いてみることにしました。

 受講者の方は、ご自身の正当性を言い続けました。ただ、そこで気づいたのが、その方には、相手の立場に立った言動がありませんでした。交通場面では、他者が、どのような行動をとるかを考えて対処しなければなりません。この点にやや欠けていると思いました。

 十分に話を聞いてから、非常に難しいことですが、私は、他者の立場に立って考え行動することが、仕事や生活だけでなく、運転も同じであることをゆっくりと話をしては、受講者の方の話を聞くことを繰り返しました。しばらくすると、「自分には、そんな考えが少なかったな」と言われました。

 また、同席をされていた上司の方も「自分自身の意見はわかる。でも、その意見を少し横においといて、視点を変えて運転することが、会社としても大切だ」と言ってくださいました。

 企業ドライバーには、加害事故はもちろん、被害事故も避けるという積極性が必要です。この点を理解していただくためには、常に相手の方の話を十分に聞くことの大切さを感じた研修でした。

(高林一夫)

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