赤いハンドバック 事故再発防止研修にて-1

 バーン!机に叩き付けられた赤いハンドバックは、1回転して床に落ちました。

 「どうして、車を3回ぶつけたくらいで、こんなものを受けないとならないの!」と、ハンドバックの持ち主が声を荒げます。

 事故再発防止研修を受講される方が、自動車教習所に来られるやいなや、受付でハンドバックを叩き付けたのです。プロレスラーがリングに上がってすぐ、もらった花束をレフリーに叩きつけるように。

 この方に同伴されて来所した、上司にあたる車両担当者様も困った顔をされています。わたしは、“高そうなハンドバックだな”と少し違ったことを思っていました。

 いかにも、プライドの高そうな方です。このような研修を受講すること自体が恥ずかしかったのか、今にも踵を返して帰りそうな勢いです。

 慌てた車両担当者様が、「社内のルールですから、仕方がないのです」となだめます。わたしは、「せっかくの機会ですから、受講してください」と続けました。

 そんな丁寧な対応に少し落ち着きを取り戻したのか、受講者の方は帰ることをやめ、渋々ではありますが研修の教室へ入りました。

 しかし、場の空気はピーンと張りつめています。わたしは、一つひとつ言葉を選びながら、ゆっくりと研修を進めていきました。

(野村幸一)

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